>>56585948世界にまだ、はっきりとした形がなかった頃。
神と人とポケモンの境が曖昧だった頃。
絶対神アウスは、究極なる世界の創世のため、その荒ぶる力を分けた分身、巨人を産んだ。
巨人はすべてを壊し、喰らい、浄化する力を持っていた。
巨人の力により、あらゆる壁は砕け、世界は広がっていった。
1人の男がいた。
ある時、男の暮らす地に、1人の傷ついた女が倒れていた。
男は、女を連れ帰り、手厚く介護した。
やがて二人は愛し合い、 その傷がすべて癒えた頃、女は二人の子を身ごもっていた。
しばらくして、女は双子が産んだ。
すると女はその姿を、神々しく変化させ、語り始めた。
私はアウスという神である。
私はこことは違う場所に暮らしていた。
しかし我が分身である巨人にここに追いやられてしまった。
巨人は、私自身であるから、私はあの者を殺すことはできないのだ。
巨人は全てを破壊し、喰らいつくす。いずれこの世界にも降りてくるだろう。
どうかその日まで、その子らを大切に育てて欲しい。
あの者を殺せるのは、私と同じ力を持つ者、即ち、神と人とポケモンの3つの力を持つ、この子らだけなのだ。
語り終えるとアウスは男の前から消えた。
男は双子に名をつけた。アウスの真の姿を見た時に感じた2つの言葉。
光を意味する言葉イア、時を意味する言葉エアと。
父の愛を受け、双子は健やかに成長を続けた。
やがてその身丈が父に迫る頃、双子は声を揃え父に言った。
巨人が来た。
辺りから色も音も穏やかな気配も消えていった。
人やポケモンが消えていった。
その虚無の向こうに巨人が吠えていた。
巨人は双子の姿を見つけると、猛り狂いながら襲いかかってきた。
思わず父は飛び出した。身を呈し、巨人から子を庇うと父は力尽きた。
するとイアとエアの体に変化が起こった。
イアの人の体は裂け、逞しい四肢が伸びた。その上腕は金剛石のように輝いていた。
エアの人の体は裂け、しなやかな2本の脚が伸びた。肩から背中までを、真珠のような球が覆った。
巨大なドラゴンに姿を変えたイア、エアは、巨人に飛びかかっていった。
長い戦いの果て、イアとエアの前に巨人は倒れた。
イア、エアは父の躯の前に駆け寄り、大きく吠えた。
そこに絶対神アウスが降り立ち言った。
身は滅んでも魂が滅ぶことはありません。
父の体から3つの光が溢れだした。
その光は、眼の神レイ、心の神アイ、声の神ハイとなった。
アウスは3人の神に言った。
愛しき者の化身たちよ、この世界にあなたたちの祝福を。
レイが目覚めると、あらゆるものがそこに現れた。色と輪郭が生まれた。
アイが願うと、あらゆるものがそこに感じられた。穏やかな気配が広がった。
ハイが叫ぶと、あらゆるものがそこで震えた。幸福な音色が響きはじめた。
3匹の神はあらゆる場所を駈け巡り、その加護を振りまいた。
世界に幸福が充ち満ちた。
アウスは巨人の躯に祈りを捧げた。すると躯は巨大な山に変化した。
アウスは、イア、エアに言った。
あなたがたは、何処よりも高いこの場所から、世界を見守りなさい。光を注ぎ、時を放ちなさい。
アウスは、天へと登っていった。
イア、エアは大きく嘶き、巨大な山に消えていった。