>>56573997狩人の家族がいた。
年老いた父と母と兄と妹の家族だった。
母と妹はいつものように森に木の実を集めに出かけた。
父と兄はいつものように狩りにでかけた。
いつものように山を越え、野原に出るとそこに一匹のケンタロスがいた。
ケンタロスは、物凄い勢いで二人に向かって突進してきた。
怯えた兄はその場に立ちすくんでしまった。
父親はケンタロスの前に飛び出して兄を庇って怪我をした。
しかし、父は素早く矢を放つと、ケンタロスはその場に倒れた。
父は仕留めた獲物に近づくと、まずその角を切った。
そして祈りを捧げて、空に投げた。
それから大きなナイフで皮と肉を切り分けながら、兄に言った。
「ケンタロスを仕留められたら、必ず始めに角を切れ。そして祈りを忘れるな」
次の日。母と妹はいつものように森に木の実を集めに出かけた。
年老いた父は怪我をしていたし、昨日仕留めた獲物がまだあったので、休むよう言った。
だが、早く一人前になりたい兄は狩りにでかけた。
山に入ると、そこに一匹のオタチがいた。
兄は素早く矢を放ち、オタチを仕留めた。
兄は昔父に習った通りに、仕留めたオタチの尾を切って、祈りを捧げて土に埋めた。
そして皮と肉を切り分けて、再び山の奥へと進んだ。
森の途中にある湖で、オタチを捌いた刀を洗っていると、湖のほとりにマリルが現れた。
兄は素早く弓を構えて矢を放ち、マリルを仕留めた。
兄は昔父に習った通りに、仕留めたルリリの尾を切り、祈りを捧げて土に埋めた。
そして皮と肉を切り分けて、再び山の奥へと進んだ。
山を越えて、野原に出るとそこに、またオタチがいた。
兄は素早く矢を放ったが、外れ、オタチは逃げていった。
野原を進むとそこに一匹のケンタロスがいた。
兄は素早く矢を放ち、ケンタロスを仕留めた。
父は仕留めた獲物に近づくと、まずはその角を切って祈りを捧げた。
そして、祈りを捧げて土に埋めた。
そして皮と肉を切り分け、家へと帰った。
夜が更ける頃、家に着くと、部屋中が荒らされていた。
そこら中にケンタロスの足跡があった。
部屋の奥に父親が倒れていた。
父は言った。
「お前がケンタロスとの約束を守らなかったので、女たちに角が生えて、ケンタロスになってしまった。ケンタロスの牝は半分人間なのだ。角を切れば人間、角を伸ばせばケンタロスなのだ。だけどもう2人は全部ケンタロスになってしまった」
翌朝、親子が野原に行くと、そこに二匹のケンタロスがいた。
二人を見ると、二匹は野原の向こうに駆けていった。